宇和島鯛めしとは?鯛の刺身を卵入りのタレごとご飯にかける、宇和海の漁師めし

「鯛めし」と聞いて、鯛の身を米と一緒に炊き込んだご飯を思い浮かべる人は多いはずです。ところが宇和島の鯛めしは、まったくの別物。火を通さない真鯛の刺身を、卵を溶いたタレにくぐらせて、炊きたてのご飯にかけて食べます。
口に入れると、ひんやりした鯛の身と、甘めのタレ、熱いご飯が一度に広がる。生の魚をこうして丼にする食べ方は全国でも珍しく、宇和島を代表する郷土料理として、農林水産省の「農山漁村の郷土料理百選」にも選ばれています。
宇和島市内の郷土料理店の鯛めし。右手前が卵を溶き入れたタレ 撮影: Snap55 / Wikimedia Commons CC BY 3.0
宇和島鯛めしはどんな料理?
主役は、薄く切った真鯛の刺身です。これを、だしと醤油、みりんなどを合わせたタレに生卵を溶き入れたものにからめ、温かいご飯の上にのせます。店によって、ごま、ねぎ、刻みのり、わかめなどの海藻、青じそといった薬味が添えられます。
膳で出てくるときは、刺身・タレ・ご飯・薬味が別々の器に分かれていることが多く、自分で合わせながら食べるのが楽しいところ。刺身をタレに入れるだけで、見た目はぐっと「漁師めし」らしくなります。
はじまりは、火を使えない船の上
宇和島鯛めしのはじまりには、船の上の食べ方だったという言い伝えがあります。
室町時代から戦国時代にかけて、瀬戸内から宇和海にかけては水軍が活動していました。火を使えない船の上で、酒を飲んだあとの茶碗にご飯をよそい、醤油に浸した鯛の刺身をのせて混ぜて食べたのが始まり――と伝えられています。その食べ方が、のちに漁師の船上料理として受け継がれ、宇和島の家庭や郷土料理店に広がりました。
言い伝えの細部は語り手によって違いますが、「生の魚を、火を使わずにすぐ食べる」という発想そのものは、魚がすぐそこにある海の町ならではのものです。
なぜ宇和島では「生の鯛」なのか
理由のひとつは、鯛がとにかく身近なことです。
リアス式海岸が続く宇和海は、魚の養殖が盛んな海です。愛媛県は養殖マダイの生産量が1990年以降ずっと全国一で、2006年以降は全国のマダイの半分以上を生産しています。新鮮な鯛が手に入りやすいからこそ、刺身のまま食べる鯛めしが日常の味として根づきました。
もうひとつは、タレの力です。とれたての鯛は、身がしまって歯ごたえがある一方、熟成させた魚ほどうま味は強くないとも言われます。そこに、だしと醤油のタレ、卵のコク、海藻の香りが加わることで、白いご飯によく合う一杯になります。
食べ方の手順
店で出てきたら、次の順番で食べるのが基本です。
- タレの器に生卵を割り入れ、よく溶きほぐす(最初から卵が溶いてある店もあります)
- 刺身をすべてタレに入れ、全体にからめる
- 好みで、ごま・ねぎ・海藻などの薬味を加える
- 茶碗のご飯に、刺身とタレをかけて食べる
タレは一度に全部かけず、ご飯の量に合わせて少しずつかけると、最後まで味がぼやけません。ご飯のおかわりができる店なら、2杯目は薬味を足して味を変えるのもおすすめです。
刺身とタレをご飯にかけた宇和島鯛めし(松山市内の専門店) 撮影: Fred Cherrygarden / Wikimedia Commons CC BY-SA 4.0
松山の鯛めしとはまったく違う
同じ愛媛でも、松山など中予・東予で「鯛めし」といえば、鯛を米と一緒に炊き込んだご飯を指すことが多くなります。鯛のだしが米にしみ込んだ、やさしい味の炊き込みご飯です。
- 宇和島の鯛めし:生の刺身を、卵入りのタレごとご飯にかける
- 松山の鯛めし:鯛を丸ごと、または切り身を米と一緒に炊き込む
どちらも「鯛めし」ですが、食べたときの印象は正反対。松山の炊き込み式については、松山鯛めしの記事で詳しく紹介しています。愛媛を旅するなら、南予と中予で食べ比べてみると、同じ県の中での食文化の違いがよく分かります。
鯛を米と一緒に炊き込むタイプの鯛めし(比較用) 撮影: Araiyasushige / Wikimedia Commons CC0
宇和島で食べるなら
宇和島市内では、郷土料理店や海鮮の店の多くが鯛めしを出しています。宇和島市観光物産協会の「うわじま観光ガイド」では、次のような店が紹介されています。
- かどや(駅前本店・弁天町店)
- ほづみ亭
- 和日輔(本店・別邸南楽園店)
- 富屋
- 一心
- 有明
- 道の駅 きさいや広場のフードコート
かどや駅前本店はJR宇和島駅の近くにあり、鉄道で訪れても立ち寄りやすくなっています。宇和島には「宇和島鯛めし協同組合」もあり、郷土の味として守り伝えています。
松山市内にも、宇和島鯛めしを出す専門店や郷土料理店があります。このページの下で、EHIME NOW に登録されているお店を紹介しています。営業時間や定休日は変わることがあるので、出かける前に各店の案内を確かめてください。
あわせて味わいたい宇和島の味
宇和島には、鯛めしのほかにも宇和海の魚を生かした郷土料理があります。小魚を骨ごとすり身にして揚げるじゃこ天、千切りのこんにゃくを魚のそぼろで覆って祝いの席を彩るふくめんは、鯛めしと一緒に覚えておきたい南予の味です。
参考にした情報
- 農林水産省「郷土料理百選」宇和島鯛めしのレシピ
- 宇和島市観光物産協会「うわじま観光ガイド」宇和島の鯛めし
- 宇和島鯛めし協同組合
- 愛媛県「FISHERIES KINGDOM EHIME」マダイ
- 瀬戸内Finder(せとうち観光推進機構)宇和島鯛めし
- うま味インフォメーションセンター「日本の郷土料理とうま味」宇和島鯛めし
写真について
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