じゃこ天とは?宇和海の小魚を骨ごとすり身にして揚げる、南予の毎日のおかず

愛媛の食べものをひとつだけ挙げるとしたら、じゃこ天を選ぶ人は多いと思います。小判の形をした茶色い練りもので、噛むと小魚の香りと塩気が一気に広がる、南予の毎日のおかずです。
上品な白いかまぼことは、成り立ちがまるで違います。じゃこ天は、宇和海でとれた小魚を皮も骨もまとめてすり身にして揚げたもの。魚をまるごと食べているような、力のある味がします。
じゃこ天(2006年4月撮影) 撮影: Hykw-a4 / Wikimedia Commons CC BY-SA 3.0
じゃこ天はどんな食べもの?
材料は、底引き網でとれた小魚です。ホタルジャコ(地元ではらんぼとも呼ばれます)、エソ、小アジなど、その日に揚がった魚を使います。
これを身だけでなく皮や骨ごとすりつぶし、小麦粉・卵・塩を加えて堅めに混ぜ、小判形に整えて油で揚げます。骨ごとすり身にするため、色は白ではなく灰色がかった茶色。表面はこんがり、中はみっちりと詰まった弾力があります。
南予では、じゃこ天のことを「天ぷら」「皮てんぷら」と呼ぶ人もいます。特別な日の料理ではなく、食卓にふつうに出てくるおかずだからこその呼び方です。
名前の由来は「雑魚」か「ほたるじゃこ」か
「じゃこ天」という名前には、二つの説があります。
- 底引き網でとれたいろいろな小魚(雑魚=ざこ)でつくるので「ざこ天」、それがなまって「じゃこ天」になった
- 材料のほたるじゃこ(はらんぼ)から「じゃこ天」になった
どちらの説も、「値の張る魚ではなく、身近な小魚をおいしく食べきる」という同じところに行き着きます。
始まりは、仙台から呼ばれた蒲鉾職人
宇和島藩史によれば、じゃこ天の始まりは元和元年(1615年)。宇和島藩の初代藩主・伊達秀宗が、故郷を偲んで仙台から蒲鉾職人を連れてきてつくらせたことによる、と伝えられています。
伊達家とのつながりが残る宇和島で、海の恵みと職人の技が結びついて生まれた――そう考えると、日常のおかずの見え方も少し変わります。
松山市の蒲鉾店でじゃこ天を成形する様子(2010年7月撮影) 撮影: Koppepan / Wikimedia Commons CC BY 3.0
おいしい食べ方
いちばんのごちそうは、店先の揚げたてをそのまま食べることです。買って帰ったあとは、次のような食べ方が定番です。
- 魚焼きグリルやフライパンで軽く炙り、大根おろしとしょうが醤油を添える
- うどんにのせる(だしに魚のうま味が移ります)
- おでんに入れる
- 刻んで炒め物や炊き込みご飯に混ぜる
- 衣をつけて揚げ直し、じゃこカツにする
炙ると表面の油の香りが戻り、魚の風味がぐっと立ちます。冷たいままより、ひと手間かけたほうが断然おいしい食べものです。
編集部から:東京の友達には、これを持たせています
東京から友人が来たときの土産に、編集部ではいつもじゃこ天を選んでいます。日持ちのする菓子より喜ばれることが多く、「これは愛媛でしか食べられない味だ」と言ってもらえるからです。
魚が豊かな海に面した県は多いけれど、小魚を骨ごと食べきる知恵が、ここまではっきり形になって残っている土地はそう多くありません。愛媛らしさが一枚に詰まった、おすすめの一品です。
道後の宿で出されたじゃこ天(2010年7月撮影) 撮影: Koppepan / Wikimedia Commons CC BY 3.0
買うとき・選ぶときに見るところ
同じじゃこ天でも、店によって味が変わります。買うときは次のあたりを見ると選びやすくなります。
- 魚の配合(ほたるじゃこ主体か、その日の雑魚をいろいろ使うか)
- 厚みと大きさ(薄く揚げたものほど香ばしく、厚いものほど魚の身を感じます)
- 揚げたてを売っているか(店頭で揚げている店は、その場で食べるのが最高です)
日持ちは店や商品によって違います。お土産にするときは、賞味期限と保存方法、冷蔵か冷凍かを店で確かめてください。
どこで買える?
宇和島市・八幡浜市を中心とした南予の蒲鉾店が本場です。道の駅や産直市、スーパーの練り物売り場にも各社のじゃこ天が並びます。松山でも、郷土料理店や居酒屋、駅・空港の土産売り場で手に入ります。
揚げたてを目当てに行くなら南予へ。旅の最後に買って帰るなら、松山の駅や空港が便利です。
このページの下では、EHIME NOW に登録されているお店を紹介しています。営業時間や定休日は変わることがあるので、出かける前に各店の案内を確かめてください。
参考にした情報
- 農林水産省「うちの郷土料理」じゃこ天(愛媛県)
- 八幡浜市「八幡浜ちゃんぽんとは」(蒲鉾・じゃこ天が八幡浜の特産であること)
写真について
本文の写真は Wikimedia Commons の自由ライセンス作品で、写真の下に撮影者とライセンスを記載しています。特定のお店の商品写真ではなく、食べもののイメージをつかむための参考写真です。
