松山の銘菓とは?タルト・坊っちゃん団子・しょうゆ餅から柑橘スイーツまで

松山の土産物売り場に立つと、菓子の種類の多さに驚きます。しかも、そのほとんどに由来があります。藩主が長崎から持ち帰った菓子、小説に登場した団子、節句に配られた餅――松山の甘いものは、町の歴史とつながっています。
ここでは、松山を代表する銘菓を、成り立ちと味の特徴から紹介します。喫茶店・カフェで過ごす時間については、松山の喫茶店文化の記事でまとめています。
タルト:藩主が長崎から持ち帰った南蛮菓子
松山で「タルト」といえば、洋菓子のタルトではありません。カステラ生地で餡を巻いた、ロールケーキのような和菓子です。
農林水産省の「うちの郷土料理」によると、由来は正保4年(1647年)。久松家初代松山藩主・松平定行が長崎の海上警備に赴いた際、カステラでジャムを巻いた南蛮菓子のタルトに出会い、その味に惚れ込んで製法を松山に持ち帰りました。ジャムが柑橘系だったことから、四国特産の柚子を加えて和菓子に仕立て直したといわれています。
製法はその後、久松家の家伝となり、明治以降に松山の菓子司へ広まりました。名前の由来には、オランダ語のtaart(ケーキ)説とポルトガル語のtorta(ロールケーキ)説があります。
松山のタルト(2010年9月撮影) 撮影: katorisi / Wikimedia Commons CC BY-SA 3.0
見どころは断面です。柚子入りの餡が渦を巻き、切り口が「の」の字になります。季節によって、桜、甘夏みかん、栗などを餡に使った品も並びます。愛媛県菓子工業組合によると、「タルト」は昭和29年以降、組合が商標登録を行っています。
坊っちゃん団子:小説から生まれた三色の団子
道後温泉の土産の定番が、坊っちゃん団子です。緑・黄・茶の三色の餡で、やわらかい餅を包んだ串団子。
愛媛県菓子工業組合によると、夏目漱石の小説『坊っちゃん』に登場する団子が由来で、道後の老舗の2代目店主が創案したものです。小説の主人公が団子を食べたことを生徒にからかわれる場面があり、そこから生まれた菓子が、いまも道後の看板になっています。
松山市内の店の坊っちゃん団子(2025年7月撮影) 撮影: Fred Cherrygarden / Wikimedia Commons CC BY-SA 4.0
しょうゆ餅:桃の節句に配られた餅
しょうゆ餅は、米粉・砂糖・醤油でつくる、やわらかくもっちりとした餅菓子です。
愛媛県菓子工業組合によると、起源は松山藩祖・松平定勝が桃の節句にしょうゆ餅をつくって配ったこと。醤油のほのかな塩気と香ばしさがあり、甘いだけではない後味が特徴です。素朴な見た目ですが、地元で長く食べ継がれてきた一品です。
松山の銘菓しょうゆ餅(2009年5月撮影) 撮影: Jyo81 / Wikimedia Commons CC BY-SA 3.0
薄墨羊羹:伊予節に謡われた桜の名をもつ羊羹
薄墨羊羹は、江戸時代創業の松山の和菓子店がつくる羊羹です。小豆の羊羹に碾茶を入れて黒みを出し、白ササゲを加えた、しっとりとした味わい。
名前は、地元に伝わる伊予節の「薄墨桜や緋の蕪」にちなみます。薄墨桜は、道後に湯治に訪れた天武天皇の皇后が西法寺で快癒を祈願した礼に賜った名桜と伝えられ、その桜の名が菓子の名になりました。大正8年の全国菓子大博覧会では名誉大賞牌を受けています。
薄墨羊羹(2019年12月撮影) 撮影: PekePON / Wikimedia Commons CC BY-SA 4.0
母恵夢:やわらかい生地で餡を包んだ現代の定番
土産売り場でよく見かける黄色いパッケージが、母恵夢(ポエム)です。つくっているのは東温市の株式会社母恵夢で、公式サイトによると1956年から菓子づくりを続けています。
やわらかい生地で餡を包んだ、しっとりとした焼き菓子。年配の人にも子どもにも配りやすく、県外の人への土産として選ばれることの多い一品です。
松山の銘菓・母恵夢(2008年10月撮影) 撮影: Jyo81 / Wikimedia Commons CC BY-SA 3.0
柑橘のスイーツは、季節で顔が変わる
もうひとつの松山らしさが、柑橘を使った甘いものです。温州みかん、伊予柑、紅まどんな、甘平など、愛媛は柑橘の種類が多く、時期によって主役が入れ替わります。
- 果汁を使ったゼリー・ジュース・ソフトクリーム
- 果皮を使った焼き菓子やピール
- 冬から春にかけて出まわる、品種名を冠した限定スイーツ
同じ「みかんのスイーツ」でも、使う品種によって酸味と甘みの出方が違います。買う前に品種を見ておくと、好みのものを選びやすくなります。
どこで買える?
- 大街道・銀天街周辺 ― 老舗菓子店の本店や支店が集まります
- 道後温泉周辺 ― 坊っちゃん団子など、温泉街らしい土産が充実
- 松山空港・松山市駅・JR松山駅 ― 帰りがけにまとめて買えます
日持ちは商品によってかなり違います(生菓子は当日〜数日、焼き菓子や羊羹は長め)。配る相手や渡す日が決まっているときは、買う前に賞味期限を確かめてください。
このページの下では、EHIME NOW に登録されているお店を紹介しています。営業時間や定休日は変わることがあるので、出かける前に各店の案内を確かめてください。
参考にした情報
写真について
本文の写真は Wikimedia Commons の自由ライセンス作品で、写真の下に撮影者とライセンスを記載しています。特定のお店の商品を勧めるものではなく、菓子のイメージをつかむための参考写真です。
