愛南日戻りびやかつおとは? その日のうちに港へ戻る、もっちり食感の“幻のかつお”

かつおのたたきといえば高知――。そう思っている人に、ぜひ知ってほしい港があります。
高知県と境を接する、愛媛県のいちばん南の町・愛南町(あいなんちょう)。その深浦(ふかうら)港は、西日本でも有数のかつおの港です。ここで揚がるかつおの中から、漁協が「これは」という一本だけを選び抜いたのが「愛南日戻りびやかつお」。一般の人は買えず、決められた店でしか食べられない、まさに“幻のかつお”です。
かつおのたたき。写真は愛南のびやかつおではなく、一般的なかつおのたたきです 撮影: ayustety / Wikimedia Commons CC BY-SA 2.0
ひと目でわかる、愛南日戻りびやかつお
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| どこ? | 愛媛県愛南町の深浦港(高知県との県境の近く) |
| どんなかつお? | その日のうちに港へ戻る「日戻り」のかつおから、漁協が厳選した一本 |
| 名前の「びや」 | 鮮度がとても高く、身がしまった魚を指す地元の浜言葉 |
| ここがスゴイ | 選んだ一本を素早く血抜き。臭みが少なく、もっちりした食感 |
| 食べられる場所 | 漁協の取扱い認定店だけ(個人向けの販売はなし) |
| 食べ方 | 刺身、たたき、揚げ物、煮物 |
深浦港は、かつおの港
まずは数字で、深浦港のすごさを見てみましょう。
愛媛県水産研究センターが1999年から2008年の記録をまとめた報告によると、深浦港には、竿でかつおを釣る船が一年にのべ800隻以上入港します。かつおが揚がる日は年に200日あまり。水揚げは年平均で約1,715トン、尾数にすると約71万尾です。
元日から大晦日まで、毎日2,000尾ずつ揚げ続けても届かない。 それほどのかつおが、この小さな港に揚がってきたのです。
水揚げされたかつお。写真は深浦港ではなくフィリピンの市場のものです 撮影: Obsidian Soul / Wikimedia Commons CC BY-SA 4.0
「日戻り」だから、おいしい
愛南町で揚がるかつおには、竿で一尾ずつ釣り上げる「一本釣り」と、船で疑似餌を引いて釣る「引縄(ひきなわ)」の2種類があります。どちらも「日戻り」で港へ帰ってきます。
日戻りとは、朝に港を出て、とったかつおをその日のうちに港へ持ち帰ること。何日も沖に出る漁と違い、とってから食卓に届くまでの時間がとても短いのです。一本釣りの漁は早朝から。生きた餌をまいてかつおの群れを寄せ、返しのない針で次々に釣り上げていきます。
「びや」って、どういう意味?
「びやかつお」の「びや」は、地元の浜で使われてきた言葉です。鮮度がとても高く、身がしまった状態の魚のことを、浜ではこう呼んできたと紹介されています。
地元の言葉をそのまま名前にしたかつお。愛媛大学の研究でも、方言のような地域の言葉を生かしたブランドづくりの例として取り上げられています。
漁協が選ぶ、たった一本
愛南日戻りびやかつおは、深浦港で揚がったかつおを全部そう呼ぶわけではありません。
愛南漁業協同組合(JF愛南)によると、深浦港で揚がったかつおの中から、漁協の職員が選び抜いた極上の一本だけを、素早く血抜きしたものが「愛南日戻りびやかつお」です。取り扱いのルールがあり、決められた取扱い認定店にだけ納められています。個人への販売はしていません。
漁協が伝える味の特徴は、臭みが少なく、もっちりとした食感と、濃いうま味。とれたその日のうちに血抜きして届けるからこその味わいです。
かつおのにぎり。写真は愛南のびやかつおではありません 撮影: Zheng Zhou / Wikimedia Commons CC BY-SA 4.0
深浦のかつおは、いつがおいしい?
深浦港の記録を見ると、かつおの季節は大きく2つに分かれます。
| 時期 | 主なかつお | ひとこと |
|---|---|---|
| 3〜4月 | 大きなかつお(2歳以上) | 若いかつおの群れの前にやってくる |
| 4〜6月 | 若いかつお(1歳ほど) | 黒潮に乗って北へ上る「上りかつお」。水揚げがいちばん多い |
| 8〜9月 | 大きなかつお(2歳以上) | 夏の終わりにもう一度多くなる |
| ほぼ一年中 | 大きなかつお(2歳以上) | 年末年始をのぞいて揚がる。深浦港ならではの特徴 |
食べられる店
愛南日戻りびやかつおは、漁協の取扱い認定店で味わえます。漁協が紹介している店は次のとおりです(このほかにも取扱店があります)。
| 店名 | 場所 |
|---|---|
| 市場食堂 | 愛南町内 |
| 船波 | 愛南町内 |
| ゆらり内海 | 愛南町内 |
| お食事処なにわ | 愛南町内 |
| 一本松温泉あけぼの荘 | 愛南町内 |
かつおが入るかどうかは、その日の漁と予約しだい。漁協も、食べに行くときは店に直接電話で予約するよう案内しています。
かつおのたたき。写真は高知県で撮影されたもので、愛南のびやかつおではありません 撮影: ノボホショコロトソ / Wikimedia Commons CC BY 4.0
かつおと一緒に巡りたい、愛南町
せっかく愛南町まで来たなら、かつおだけで帰るのはもったいない。
愛南町西海地区の外泊(そとどまり)「石垣の里」 撮影: 松岡明芳 / Wikimedia Commons CC BY-SA 3.0
西海(にしうみ)地区の外泊(そとどまり)は、斜面に石垣を積み上げた集落「石垣の里」。家々を守る石垣が段々に連なる景色は、ほかではなかなか見られません。
西海の沖に浮かぶ鹿島 撮影: Uwajima-taro / Wikimedia Commons パブリックドメイン
西海の沖には、鹿島(かしま)も浮かびます。黒潮が近づく暖かい海と、入り組んだリアス式の海岸。愛南町は、かつおを育む海そのものを楽しめる町です。
愛南町への行き方
愛南町・西海地区の山と入り江 撮影: ArchetypeRyan / Wikimedia Commons CC BY-SA 3.0
愛南町は、宇和島からさらに南へ、車で1時間前後。宇和島道路と国道56号を南へ下れば、海と山の景色が続きます。かつおの季節に合わせて、深浦の港町を訪ねてみてはいかがでしょう。
参考にした情報
お店を探す
参考: 愛南漁業協同組合(JF愛南)ほか
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