愛媛の鯛料理とは?県の魚マダイを、二つの鯛めしから祝い膳まで味わう

愛媛で「鯛」は、特別な日の魚であり、同時にとても身近な魚でもあります。祝いの席には姿のまま出てきますし、スーパーには刺身も切り身も並ぶ。この二面性が、愛媛の鯛料理の幅の広さをつくっています。
この記事では、愛媛の鯛料理を「どこで・どう食べるか」で整理します。個別の料理は、それぞれの記事で詳しく紹介しています。
マダイ(2005年11月撮影・鮮魚店で購入した個体) 撮影: Miya / Wikimedia Commons CC BY-SA 3.0
愛媛は、マダイを「県の魚」に定めた県
愛媛県の公式サイト(FISHERIES KINGDOM EHIME)によると、マダイは平成5年(1993年)に「県の魚」に指定されました。理由は、県民になじみが深く、天然マダイの漁獲量が全国トップクラス、養殖マダイの生産量が長年にわたって全国一だからです。
- 養殖マダイの生産量は1990年以降、日本一
- 2006年以降は、全国のマダイ生産量の半分以上を愛媛が生産
- 天然マダイの漁獲量も全国トップクラス
天然マダイの漁場として知られるのが、潮の流れが速く、海の難所とされる来島海峡の周辺です。速い潮にもまれて身が引き締まったマダイが獲れます。旬は9月から12月で、春の産卵に向けてエサをたくさん食べ、脂がのる時期にあたります。
養殖は、宇和海など県南西部の海で盛んです。だから愛媛では、一年を通して鯛が手に入り、祝い膳にも日常のおかずにも使われてきました。
同じ名前で、まったく違う二つの鯛めし
愛媛の鯛料理でいちばん面白いのが、「鯛めし」が二つあることです。名前は同じでも、料理としては別物です。
宇和島鯛めし ― 生の刺身を、卵入りのタレでご飯にかける
南予の宇和島では、鯛めしといえば生の刺身です。薄く切った真鯛を、だしと醤油に生卵を溶いたタレにからめ、熱いご飯にかけて食べます。火を使えない船の上の食べ方が始まりと伝えられる漁師めしで、農林水産省の「農山漁村の郷土料理百選」にも選ばれています。
刺身とタレをご飯にかけた宇和島鯛めし(松山市内の専門店) 撮影: Fred Cherrygarden / Wikimedia Commons CC BY-SA 4.0
くわしくは宇和島鯛めしの記事へ。
松山鯛めし ― 鯛を一尾、米と一緒に炊き込む
中予・松山では、鯛めしは炊き込みご飯です。鯛を丸ごと米と一緒に炊き、蒸らしてから身をほぐして混ぜます。鯛のうま味がご飯全体にしみわたる、祝いの炊き込みご飯です。
釜で炊き込んだ鯛めし(2025年2月撮影) 撮影: Araiyasushige / Wikimedia Commons CC0
くわしくは松山鯛めしの記事へ。
旅の途中で両方を食べ比べると、同じ県の中でこれほど食べ方が違うのかと驚きます。どちらが本物ということではなく、海との付き合い方の違いがそのまま料理になっています。
祝いの席に出る鯛
鯛が「めでたい」に通じることから、愛媛でも婚礼・棟上げ・還暦・喜寿・お食い初めなど、人が集まる場に鯛が並びます。
- 鯛そうめん ― 姿煮にした鯛と、波のように盛ったそうめんを大皿に。松山周辺では「鯛めん」、南予では「鯛のめんかけ」とも呼ばれます
- 法楽焼 ― 今治の宴席料理。焙烙鍋に鯛を中心に旬の魚介を並べ、塩だけで蒸し焼きにします
どちらも一尾を丸ごと使うため、予約が必要な店がほとんどです。祝い事で使いたいときは、早めに相談してください。
ふだんの鯛の食べ方
特別な料理だけではありません。愛媛では、鯛は日常の魚としてもよく使われます。
- 刺身 ― 身の甘みと歯ごたえを味わう、いちばん素直な食べ方
- 塩焼き・煮付け ― 切り身でも手に入りやすく、家庭の定番
- 潮汁・あら炊き ― 頭やあらを使い、余さず食べる
- さつま ― 焼いた鯛の身を麦味噌とすり合わせ、麦飯にかける南予の料理
- 鯛めしの素、鯛そぼろ、鯛の練り製品 ― 土産や保存食としても定着しています
「さつま」で使う魚はタイに限りませんが、タイを使うと香りと甘みがはっきり出ます。豪華な料理と同じ魚が、日常のおかずにもなる。これが鯛の産地らしいところです。
天然と養殖、どちらを選ぶ?
愛媛では、天然と養殖の両方が当たり前に流通しています。
- 天然 ― 来島海峡など潮の速い海で育ち、身が締まっている。旬は秋から冬
- 養殖 ― 一年を通して安定して手に入り、脂ののりがそろっている
店では「天然」「養殖」を明記していることが多いので、食べ比べるのも楽しみ方のひとつです。ブランド名を付けて出荷している生産者もいます。
どこで食べる?
- 松山 ― 炊き込みの鯛めし、鯛そうめんなどの郷土料理店が集まります
- 宇和島・南予 ― 生の鯛めし、さつま、鯛の刺身。魚の町らしい食べ方が揃います
- 今治・しまなみ海道 ― 来島海峡の魚介と合わせて、法楽焼や鯛料理を
時間が限られているなら、松山で炊き込みの鯛めし、宇和島で刺身の鯛めし、という二本立てがいちばん違いが分かります。
このページの下では、EHIME NOW に登録されているお店を紹介しています。営業時間や定休日は変わることがあるので、出かける前に各店の案内を確かめてください。
参考にした情報
- 愛媛県「FISHERIES KINGDOM EHIME」マダイ(県の魚の指定、生産量、漁場、旬)
- 農林水産省「うちの郷土料理」鯛めし(愛媛県)
- 農林水産省「うちの郷土料理」鯛そうめん(愛媛県)
- 農林水産省「うちの郷土料理」法楽焼(愛媛県)
写真について
本文の写真は Wikimedia Commons の自由ライセンス作品で、写真の下に撮影者とライセンスを記載しています。特定のお店の商品写真ではなく、料理や魚のイメージをつかむための参考写真です。
