今治の法楽焼とは?焙烙鍋で蒸し焼きにする、村上海賊ゆかりの海賊料理

今治の宴席に、ふたを開けた瞬間に歓声が上がる料理があります。平らな焙烙鍋(ほうろくなべ)に、鯛を中心として、エビ、ハマグリ、サザエ、イカ、ゆで卵を色とりどりに並べ、塩だけで蒸し焼きにした「法楽焼(ほうらくやき)」です。
農林水産省の「うちの郷土料理」でも、今治市の名物料理として紹介されています。華やかな見た目に対して、味付けは塩だけ。潮の速い海で育った魚介の味を、そのまま食べる料理です。
法楽焼の魚介が育つ来島海峡(2006年11月撮影) 撮影: Herry Lawford / Wikimedia Commons CC BY 2.0
焙烙鍋で蒸し焼きにする仕組み
焙烙は、塩やごま、豆類を炒るために使う平らな素焼きの鍋です。法楽焼では、この焙烙が蒸し器の役割を果たします。
- 焙烙の上に小石や松葉を並べる
- 鯛を中心に置き、まわりにエビ、ハマグリ、サザエ、イカ、ゆで卵などを盛る
- もう一枚の焙烙でふたをして、蒸し焼きにする
水を使わないので、魚介のうま味が逃げずに凝縮されます。下に敷いた小石が余分な水分を吸うため、蒸し上がりはほっくり。鯛はふっくら、貝やエビは潮の香りを残したまま火が通ります。
入れる魚介は旬のものを使うため季節によって変わりますが、鯛を中心に飾るのが基本の形です。
来島海峡の潮が育てた魚
法楽焼の背景にあるのが、日本三大潮流として知られる来島海峡です。
速い潮の流れにもまれて育った魚は、身が締まります。その魚を、余計な味付けをせずに蒸し焼きにする。法楽焼は、来島海峡の恵みをそのまま皿にのせたような料理です。
村上海賊にさかのぼる由来
法楽焼は「海賊料理」とも呼ばれます。室町時代、来島海峡に拠点を構えた村上海賊(水軍)が、戦いに勝利した際に食べていたと伝えられているためです。
海賊と聞くと略奪者を思い浮かべがちですが、村上海賊は平時には瀬戸内海の水先案内、海上警固、海上運輸など、海の安全と交易・流通を担う存在でした。戦時には小早船を巧みに操り、「ほうろく火矢」など火薬を用いた戦い方を得意としたといわれます。茶や香をたしなみ、連歌を詠む文化人でもあったと伝えられています。
今治市の大島には村上海賊ミュージアムがあり、来島海峡周辺に残る海の歴史を知ることができます。法楽焼を食べる前後に寄ると、料理の背景が立体的になります。
今治市宮窪町の村上海賊ミュージアム(2025年1月撮影) 撮影: MaedaAkihiko / Wikimedia Commons CC0
いつ食べる?
法楽焼は通年食べられる料理です。見た目の豪華さから、宴席や集まりの場で出されることが多く、家族や職場の食事会、法事の会食などにも選ばれてきました。
一人前で気軽に頼むというより、何人かで囲む料理です。ふたを開けたときに立ちのぼる湯気と香りも、この料理の楽しみのひとつです。
今治で味わうなら
農林水産省によると、今治市には法楽焼を提供する飲食店が多数あり、地元でも親しまれている料理です。料理旅館や割烹、宴会を受ける店のコース料理で出会えます。
来島海峡を望む料理旅館「大潮荘」もそのひとつで、公式サイトでは法楽焼を含む会席料理と鯛めしを楽しめる宿泊プランが紹介されています。
- 大潮荘(愛媛県今治市小浦町2-5-1/電話 0898-41-9537)
- 法楽焼付き宿泊プランを公式サイトで確認する
使う魚介や提供内容、予約条件は時期やプランによって変わります。鯛を一尾使う料理のため、予約が必要な店がほとんどです。利用前に各店の公式サイトか電話で、最新の提供状況を確かめてください。
今治には焼豚玉子飯や今治焼き鳥、せんざんきといった名物もあります。法楽焼は、その中で「海の今治」を代表する一皿です。
このページの下では、EHIME NOW に登録されているお店を紹介しています。営業時間や定休日は変わることがあるので、出かける前に各店の案内を確かめてください。
参考にした情報
- 農林水産省「うちの郷土料理」法楽焼(愛媛県)(レシピ提供元: 道後温泉ふなや 和食料理長 久保田昌司氏)
- 大潮荘 公式サイト
写真について
本文の写真は Wikimedia Commons の自由ライセンス作品で、写真の下に撮影者とライセンスを記載しています。法楽焼そのものの自由ライセンス写真が見つからないため、料理の背景となる来島海峡と村上海賊ミュージアムの写真を掲載しています。
