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じゃこ天を焼くだけ、という愛媛の夕ごはん

夕方、家に帰ってきたときには、もうあまり料理をする気力が残っていませんでした・・。

ちゃんと作ればいいのは分かっています。野菜も切ったほうがいいし、味噌汁もあったほうがいい。冷蔵庫の中身を見て、手際よく何品か作れたら、それはたぶん理想の夜です。

でも今日は、そこまで頑張れない。

買い物袋を置いて、上着を脱いで、台所に立ったところで、もう少しだけぼんやりしてしまう。お腹は空いているのに、何を食べたいのかもよく分からない。そういう日があります。 冷蔵庫を開けると、じゃこ天がありました。 ああ、今日はこれでええか。 そう思った瞬間に、少しだけ気持ちが軽くなりました。

フライパンを出して、油はひかずにそのままのせる。 火をつけると、すぐに表面が少しずつ温まってきます。焼いているあいだに、じんわり魚の香りがしてくる。特別なことは何もしていないのに、台所にちゃんと夕ごはんの気配が戻ってくる感じがします。 片面を焼いて、裏返す。 少しふくらんで、ところどころに焼き色がつく。焦げるほどではなく、でもそのまま食べるより、ちょっとだけ香ばしいくらい。皿にのせて、醤油を少し。大根おろしがあれば最高だけれど、今日はないのでそのままです。 箸でひと口。 ああ、うまい。

魚の味がちゃんとします。ぷりっとして、少しざらっとして、噛むほどに旨みが出てくる。派手ではないけれど、妙に落ち着く味です。 じゃこ天は、愛媛の名物です。

でも、名物と言われると、どこか少しよそ行きの感じがします。観光で食べるもの。お土産で買うもの。説明されるもの。(私の県外のお友達も愛媛に遊びに来た際はじゃこ天をお土産で買って帰ります。美味しいですよねー)

けれど実際には、もっと生活に近いところにある食べものだと思います。冷蔵庫にあって、焼けばすぐ食べられて、ごはんにも合う。おかずが足りない日にも助かるし、ちょっと飲みたい夜にもいい。 すごく立派な料理ではないかもしれません。

でも、こういうものが家にあると、生活は少し助かります。 白いごはんをよそって、じゃこ天をもう一口食べる。醤油がしみたところがまたおいしい。途中で七味を少しかけてもいいし、マヨネーズをつけてもたぶんおいしい。今日は何もしない。 ただ焼いて、醤油をたらして食べるだけ。

それくらいが、ちょうどいい夜でした。

仕事で少し疲れた日。買い物をする気力もあまりない日。ちゃんとした夕ごはんを作れなかった日。 そういう日に、じゃこ天が一枚ある。 それだけで、なんとかなる気がするのです。 じゃこ天を焼いただけの夕ごはんでした。 それでも、ちゃんとお腹は満たされたし、気持ちも少し落ち着いた。湯気の立つ皿を前にして、今日もまあ悪くなかったな、と思えました。 派手なごちそうではありません。

ほんでも、こういう味が冷蔵庫にあるけん、愛媛の暮らしは少し頼もしい。 そんなことを思った、平日の夜でした。

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