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愛媛の柑橘カレンダー|10月の極早生から初夏の河内晩柑まで、県民が食べ分けている「旬のリレー」

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愛媛の柑橘カレンダー|10月の極早生から初夏の河内晩柑まで、県民が食べ分けている「旬のリレー」のアイキャッチ画像
※掲載画像は記事をイメージして制作しました。

愛媛では、10月から初夏まで「みかんの季節」が続きます。

10月に青いみかん。年末に紅まどんな。年明けに伊予柑。春にせとかやデコポン。初夏に河内晩柑。品種がバトンを渡すように入れ替わって、8か月くらい途切れません。

この記事は、その8か月を月の順にたどる柑橘カレンダーです。愛媛の家でどう食べ分けているかも、いっしょに書きました。最後に「今月はこれ」の早見表があります。

まず、意外な3つのこと

愛媛のみかんは、全国3位。 「みかん県」と呼ばれますが、温州みかんの収穫量は和歌山、静岡に次ぐ3位です(2024年産)。愛媛が日本一なのは、みかんのあとに続く中晩柑類の収穫量と、柑橘の種類の多さ。県の調査では46品目が作られています。だからこの記事は「みかん」ではなく「柑橘」のカレンダーです。

伊予柑は、愛媛生まれではない。 山口県で見つかった木を、松山の人が持ち帰って育てました。くわしくは1月の節で。

同じ「みかん」でも、10月と1月は別もの。 10月のみかんは酸っぱさを楽しむもの。1月のみかんは甘くなるのを待って食べるもの。なぜそうなるかは、次の節から。

10〜11月 青いみかんから始まる

愛媛のみかんは、10月の「極早生(ごくわせ)」から始まります。

皮にまだ緑が残っていて、酸味がしっかりあります。でも愛媛の人は、これを「今年のみかんが来た」の合図として待っています。

温州みかんは、収穫の時期で呼び名が変わります。

  • 極早生 10月。日南1号など。青みが残り、酸っぱめ
  • 早生(わせ) 11月。宮川早生など。甘さと酸味のバランスがいい、いちばん普通のみかん
  • 中生(なかて)・晩生(おくて) 12月から。南柑20号、南柑4号など。甘さが前に出る

月が進むほど酸味が抜けて、甘くなっていきます。10月と12月で味が違うのは、気のせいではなく品種が入れ替わっているからです。南柑20号と4号は、愛媛の南予で選ばれた愛媛育ちの系統です。

12月 紅まどんな。名前が2つある柑橘

年末が近づくと、箱に入った紅まどんなが並びます。皮が薄くて濃い紅色。果肉はゼリーみたいにやわらかくて、種がない。愛媛県が育てた品種で、愛媛でしか作られていません。

店頭に並ぶ愛媛県産の紅まどんな店頭に並ぶ紅まどんな(2021年12月) 撮影: Asturio Cantabrio / Wikimedia Commons CC BY-SA 4.0

この柑橘、名前が2つあります。

  • 愛媛果試第28号 品種としての正式な名前。2005年に登録
  • 紅まどんな 全農が商標登録した、売るときの名前

だから同じ実が、贈答用の箱では「紅まどんな」、直売所や訳あり品では「愛媛果試第28号」や「愛果28号」として売られています。

もうひとつ。皮がむきにくいです。県の資料にもはっきり「剥きにくい」と書いてあり、JAはナイフで切って食べる方法をすすめています。みかんのつもりで手でむくと苦戦します。

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贈答用の箱入りと、家庭用の訳あり品で値段が大きく違います。「愛果28号」で検索すると家庭用が見つかります。

1月 伊予柑と、冬を越したみかん

年が明けると、主役は伊予柑に替わります。香りが強くて、甘みと酸味の両方がある柑橘。愛媛を代表する果物ですが、生まれは愛媛ではありません。

枝になったままの伊予柑の実木になる伊予柑。皮の厚さと凹凸がみかんとの違いです 撮影: Jpbrigand / Wikimedia Commons CC BY-SA 4.0

話は明治時代にさかのぼります。

  • 1886年ごろ 山口県の農園で、見慣れない柑橘の木が見つかる
  • 1889年 松山の三好保徳がこの木を知り、苗木200本と親木を持ち帰る
  • やがて 松山の周りに産地ができ、「伊予蜜柑」の名で東京へ出荷
  • 1930年 温州みかんと紛らわしいので、東京の果物商の集まりで「伊予柑」に決まる

生まれは山口、育ちは松山、名前は東京で決まった柑橘。いま主流の「宮内伊予柑」も、松山の宮内さんの園で見つかった枝変わりです。

伊予柑には、もうひとつ特徴があります。収穫してすぐには売らないこと。貯蔵庫で寝かせて、甘さと赤みが増してから出荷します。冬を越した温州みかんも同じで、これが「蔵出しみかん」。年明けのみかんが甘いのは、冬の間に酸が抜けているからです。10月の酸っぱいみかんと、1月の甘いみかんは、同じ果物の別の顔です。

2月 高級柑橘がそろう月

2月は、いちばん顔ぶれが豪華な月です。愛媛生まれの品種と、よそで生まれて愛媛が主産地になった品種が並びます。

愛媛生まれ

  • 甘平(かんぺい) 「甘くて平たい」から名前がついた。皮が薄くて手でむける。袋ごと食べられて、しゃきっとした歯ごたえ。紅まどんなよりずっと気軽
  • 媛小春(ひめこはる) 小ぶりで鮮やかな黄色。むきやすく、ほかにないフルーティーな香り。「早春に収穫される愛らしい果実」が名前の由来

育ちは愛媛

  • せとか 国の研究機関が育てた品種。とろけるような濃い甘さで、愛媛が全国生産の約8割を占める
  • はるみ デコポンと同じ親から生まれた姉妹品種。ぷちぷちした果肉

店頭に並ぶ愛媛県産のせとかのパック店頭に並ぶ愛媛県産のせとか。ラベルには「清見×アンコール×マーコット」の掛け合わせが書かれています(2020年3月) 撮影: Nesnad / Wikimedia Commons CC BY 4.0

ここでひとつ気づくことがあります。せとか、はるみ、デコポン、媛小春。この4つはどれも、たどると「清見」という品種に行き着きます。清見は宮川早生とオレンジの子で、たくさんの品種の親になりました。2月の売り場の柑橘は、半分くらいが清見の子や孫です。

3〜4月 春の柑橘と、4番目の愛媛生まれ

冬の終わりから春は、不知火(デコポン)と清見の季節です。デコポンは頭の出っ張った形で、濃い甘みと程よい酸味。清見は果汁が多くてまろやか。

頭の出っ張った3個の不知火(デコポン)頭の出っ張った形が目印の不知火(デコポン) 撮影: Laitr Keiows / Wikimedia Commons CC BY-SA 3.0

そしてこの時期に、愛媛生まれの新顔が出てきました。紅プリンセスです。

親は紅まどんなと甘平。つまり12月と2月の主役どうしの子どもです。県の資料は「紅まどんなの食感と、甘平の濃い甘味をもつ」と説明しています。出回るのは3月中旬から4月。紅まどんなが終わり、甘平も終わったあとに、その2つの子が出てくる。愛媛の柑橘カレンダーは、こうやって空いた月を埋めるように増えてきました。

5〜7月 河内晩柑。名前が6つある柑橘

みかんの季節の最後を締めるのが、河内晩柑(かわちばんかん)です。

黄色くて大きな実。愛南町の公式サイトは「苦みのない和製グレープフルーツ」と表現しています。甘さはひかえめで、酸味がさわやか。食べ頃は4月から7月で、愛南町が生産量日本一の産地です。

枝になったままの黄色い河内晩柑の実収穫前の河内晩柑。黄色くて大きく、グレープフルーツに似た見た目です 撮影: Jpbrigand2 / Wikimedia Commons CC BY-SA 4.0

この柑橘も名前が多い。1935年に熊本県の河内村で見つかったので「河内晩柑」ですが、売り場では別の名前で出会うことがよくあります。

  • 美生柑(みしょうかん)
  • 宇和ゴールド
  • 天草晩柑
  • ジューシーフルーツ
  • 灘オレンジ
  • 夏文旦

愛南町はこれらをまとめて「愛南ゴールド」の名で商標登録しました。「美生柑」は、合併前の御荘町の名前から来ています。

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河内晩柑は4月から7月が食べ頃です。「愛南ゴールド」「美生柑」の名前でも売られています。

番外 蛇口から出るみかんジュース

「愛媛では蛇口からみかんジュースが出る」。もともとは冗談のような言い伝えでした。

でも2017年7月、松山空港の1階に、本当に蛇口からみかんジュースが出る常設の店「Orange BAR」ができました。営業は8時から19時15分。旅の最初か最後に、本当に蛇口をひねれます。

蛇口からコップにみかんジュースが注がれる様子蛇口から注がれるみかんジュース(2009年撮影)。常設店ができる前から、催しの場で登場していました 撮影: sota / Wikimedia Commons CC BY-SA 2.0

家の中の光景は、もっと地味です。玄関や台所にみかん箱。こたつの上にみかん。学校から帰った子どもが、おやつ代わりにみかんを続けて何個も食べる。愛媛みかんの出荷先は約8割が関東で、県内で食べられるのはその一部です。それでも愛媛の人の冬の記憶には、必ずみかん箱が置いてあります。

今月はこれ。愛媛の柑橘カレンダー早見表

月ごとの主役と、ひとことの目安です。年や産地によって前後します。

  • 10月 極早生みかん。青みが残って酸っぱめ。「今年のみかんが来た」の合図
  • 11月 早生みかん。いちばん普通のみかん。月末から紅まどんな
  • 12月 中生・晩生みかん。紅まどんなは贈答の定番、皮はナイフで
  • 1月 伊予柑。貯蔵して甘くなった蔵出しみかん。甘平と媛小春が月の半ばから
  • 2月 甘平、媛小春、せとか、はるみ。高級柑橘がそろう。デコポンが月の半ばから
  • 3月 せとか、デコポン。伊予柑は終わり。紅プリンセスが月の半ばから
  • 4月 デコポン、清見、紅プリンセス。河内晩柑が始まる
  • 5〜7月 河内晩柑(愛南ゴールド)。みかんの季節の締めくくり
  • 8〜9月 露地の柑橘はお休み。温室みかんだけが出回る

参考にした情報

  • 農林水産省「令和6年産みかんの結果樹面積、収穫量及び出荷量」
  • 愛媛県農産園芸課「かんきつ類の統計」
  • 愛媛県みかん研究所「品種紹介」(愛媛果試第28号・甘平・媛小春・愛媛果試第48号)、「愛顔の愛媛かんきつ旬別オールスターズ34」
  • 愛媛県「愛媛県はなぜ日本有数のみかん産地か」
  • 愛媛県生涯学習センター『えひめの記憶』(伊予柑の来歴)
  • JAえひめ中央「かんきつらんど」
  • 農研機構 果樹茶業研究部門 育成品種紹介(清見・はるみ・せとか・不知火)
  • 愛南町公式ホームページ「愛南ゴールド(河内晩柑)」
  • 松山空港公式サイト「Orange BAR」

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